2009年01月14日

14和やかな時間

真人は、トレーニングジムで汗を流し、スイミングプールで長距離泳いだあと、シャワーを浴び、カフェでメンバーの仲間数人と談笑しながら、春子の上がるのを待った。
暫くすると春子がカフェの入口に顔を出し、目で合図するのを確認した真人は、
仲間との話を切り上げて、立ち上がった。
外に出ると、先を行く春子が笑顔で振り返った。
井の頭通りに出ると、行き交う人々の流れが鮮やかな色彩で、さまざまな姿を描いている。
春の生暖かなそよ風が肌に心地良く、流した汗を拭い取ってくれて、真人は爽やかな気持ちになった。
札幌は、まだ雪が沢山残っていたよ」
「そうなの、それじゃあ、北の街を感じられて良かったわね。行ってみたいな」
二人は、歩きながらここ数日の出来事を話し合った。
地下鉄銀座線で一駅、表参道を降りて骨董通りを歩くと、人の流れは渋谷と変らない賑わいを見せている。

マスターと談笑する春子のイタリア語は流暢で、真人も和やかな雰囲気に引き込まれた。
「真人の会社、順調にスタートしたみたいね」
春子の好きなワインを飲みながら、熱い眼差しを真人に向けてきた。
「怖いくらい上手く進んでいるんだよ」
「それなら、案外早く海外展開に踏み切れそうね」
「この夏休みには、ヨーロッパ各地を回る予定にしているんだ」
「楽しみだわ。イタリアは一緒できるのよね」
「そのつもりで、予定を立てるよ」
「嬉しいわ。何日くらい一緒に行動できる」
「1週間かなあ」
「少ないけど、まあいいか。ミラノは外せないわよ」
お母さんの店を見るのが楽しみだよ。現地の人も使っているんだろ」
「そうよ、一人。眼の大きな美人らしいわよ」
「楽しみだな」
春子が頬を膨らませながら、真人を睨んだ。
「惚れちゃ駄目よ。母によく言っておこう」
「言葉が通じないから大丈夫さ」
「でも、英語が通じるから、真人は危ないよ」
春子は、真人が英語を得意としていることを知っているから、心配なのだ。
「イタリア女性の恋人か、悪くないな」
春子が突然、手を伸ばして真人の手を思い切り強く叩いた。ワイングラスが跳ね上がった。
「後で、思い切りいじめてやるからね。覚悟していなさい」
春子は、もう真人が家に来ることを決めている。
その何気ない言葉のなかに、年上である表情をのぞかせる。
そんなときでも、春子は笑顔を絶やさない。真人の冗談にはもう慣れ切っている。
posted by シーサン at 15:15| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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