2009年07月10日

191.家族のこと

パトリシアの3人姉妹の上2人は、大学を卒業してそれぞれに会社員の家に嫁ぎ、
「末っ子のわたしは、両親が離したくないらしいのよ」と、笑いながら話をしてくれた。
「わたしの家は、大農場を経営しているのだけれど、誰も跡を継ぐ人がいないから、わたしに養子を貰いたいと言っているの。でも、わたしは農業をやる気はないの。小さい頃から手伝ってきて、もう十分だと思っているの。だから、シカゴで就職したら、そこでいい人を見つけるつもりなのよ」
そう言って、パトリシアは笑った。
「そうか、それではお父さんがっかりしているだろうな。諦め切れないのじゃないかなあ」
「そうなのよ。今回この旅行のことを話したら、誰でもいいからいい人見つけて、連れて来いって言うのよ」
「お婿さん候補か・・・」
「あなた如何お、・・・」
「行ってみるかな、・・・」
「え?・・・本当にその気あるの?」
パトリシアは、真剣な眼差しになった。
「でも、わたしじゃあ、勤まらないだろうな」
「大丈夫よ、あなたのからだなら大丈夫、十分やっていけるわ。強靭そうなからだしているもの。本当に来てくれるの、そうしたらわたし考える」
冗談に言ったつもりが、パトリシアは本気にしたらしく、その真面目な顔に、真人は些か戸惑いを感じた。
しかも、出逢ったばかりの真人を受け入れると言うのだから驚いた。
「でも、始めたばかりの会社を投げ出すわけに行かないな」
真人は、やんわりと冗談を打ち消した。
「そうでしょう、そうよ、それは出来ないわよね。・・・ぬか喜びだったわね」
「ごめんな、期待を持たせて、・・・」
「いいのよ、それよりも、わたし、あなたの会社で採用して欲しいわ。お話ししていたら、あなたと仕事をしたくなってきたの」
「パトリシアの明るい性格は、わたしの会社の仕事に向いているな。帰ったら、アメリカ担当の仲間とよく相談して連絡するよ」
そう言うと、パトリシアは携帯番号、メールアドレスなどを教えてくれた。
パトリシアは、農場の名前も教えてくれた。
「あなたは、農場に関心ありそうだから、一度来てみない?」
そう言ってから、
「でも、来たら帰れないかもしれませんよ」
笑いながら真人の顔を覗き込んだ。
「強制労働させられるのか?」
真人が、冗談を言うと、「まさか、・・・」と言って、真人の脚をポンと叩いて笑った。
「父も、母も、あなたを一度で気に入ってしまいそうなの。だから、帰してくれないかもしれないのよ」
「そうか、それは嬉しいな。ますます行ってみたくなったよ」
「来てください。農場と言っても近代化しているから、働きやすいところよ。荒くれ男などいないから大丈夫よ」
「それで安心したよ。働きが悪いと言って、鞭で叩かれたら如何しようかと思ったよ」
二人は、顔を見合わせて笑った。
「家は広いから、あなたは、そこで動画配信の仕事をしていてもいいのよ。パソコン1台あれば、仕事が出来るのでしょう?」
「そうだな、手にマメができるような作業をやらない限り、仕事は出来るよ」
「簡単な作業は沢山あるから、少し手伝えばいいのよ」
「そうしているうちに、次第に農場の仕事に嵌まり込んでいくのを期待されるんだろうな」
「わたしの両親は、人の使い方が上手いからね。その可能性はあるわ」
「パトリシアは、正直だな」
真人は、パトリシアの素直な性格が気に入った。
パトリシアと話をしていると、育った家庭の雰囲気が手に取るように分かる。
真人は、パトリシアの家族に会いたくなってきた。
「あなたの両親は、どんな人?・・・知りたくなってきたわ」
パトリシアも、真人に関心を示し家族のことを知りたがった。
少し躊躇いながら、真人は小さい頃のことから、ひとりになったころのことまで話した。
「まあ、何てことでしょう。・・・」
パトリシアは、しばらく真人の顔を覗き込み、言葉をなくしている。
posted by シーサン at 15:29| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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