2009年07月11日

192.うれしい誘い

パトリシアは、育った家の家族のことがさまざまな形で甦ってきた。
両親と姉妹が揃った家庭の恵まれた環境で、幸せに育ったパトリシアは、真人の境遇にどのような言葉をかけたらいいのか分からない。
慰めの言葉をかけるには、あまりに真人は立派な大人に見える。
でも、ひとりで生活するよりも、温かな家族のなかで生活したほうが精神的には、良いに決っている。
「マサト、今何年生なの?」
「2年生、だから卒業まで、あと2年あるんだよ」
「そうか、・・・卒業するまでは、離れられないわよね。・・・我が家に来て欲しいけど、・・・」
「そうだな、ありがたい誘いだけど、今は、無理だな」
「そうよね、わかったわ。・・・」
真人も、パトリシアも、一瞬言葉が途絶えた。
パトリシアは、仲間の一人に声をかけ、真人と二人の写真を撮らせた。
真人もカメラを出し、パトリシアと並んだ写真を撮ってもらった。

そのとき、ナンシーからメールが届いた。
ナンシーは、真人に「今どの辺りにいるのか」と聞いてきた。
真人は、「もう間もなくチューリッヒに着くところだ」と返信した。
すると、ナンシーから「それなら、これからチューリッヒ駅に行くから、駅構内の旅行案所前で会いましょう」と、返事が来た。
そして「昼食を一緒に食べたい」と付け加えてある。

以前、ナンシーとは、その日の午後1時に会う約束をしていた。
会う場所は、ナンシーが決めたカフェであったが、昼食を一緒にする話はしていなかった。
真人のチューリッヒ到着時間が、そのときは確定していなかったからだ。

「わたしは、チューリッヒで降りますが、あなたたちは?」
真人はパトリシアに問いかけた。
「わたしたちも、チューリッヒで降ります。そこで食事をした後、市内観光をします。一緒に食事をしませんか?」
「実は、仕事の関係で会う人と打合せをすることになっているのです。ご一緒できなくて残念です。どうぞ楽しいご旅行を続けてください」
真人はそう応えた。
「分かりました。・・・わたしたちチューリッヒに1泊します。もしお仕事が済んで、お時間が取れるようでしたら、もう一度お会いしたいです」
パトリシアは、熱心に誘いをかけてくる。
真人の会社の仕事に、パトリシアは関心を持ったのだ。

真人は、ナンシーとの話にどのくらい時間がかかるか予測がつかない。
ナンシーは、個人的に相談したいことがあるから、時間を作って欲しいといっていた。
奥山美樹と鉄道会社の観光部を訪問して打合せをした後、同席したナンシーから帰りがけに呼び止められて持ちかけられた相談の時間である。
ナンシーと別れた後は、奥山美樹と会うことになっている。
その時間は、決めていないが、おおよそ18時頃と話してある。
それまでの間に、時間が取れるかもしれないと、真人は考えた。
「そうですね。わたしも、もう一度あななたたちとお会いしたいです。仕事の打ち合わせが済んだら、連絡しますので、そのときにお会いする時間と場所を決めましょう」
真人は、そうパトリシアに応えた。
「ありがとうございます。お待ちしていますので、よろしくお願いします」
パトリシアは、嬉しそうな笑顔を向けてきた。
posted by シーサン at 14:37| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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