通りがかった人に声をかけて、駅前に出たところで全員の写真を撮り、真人のカメラでも撮った。
そこで、真人はパトリシアたちと別れた。
パトリシアたち仲間は、パトリシアの一声で全員が協調して動いている。
パトリシアがツアーの幹事なのか、それともパトリシアのリーダーシップが全員をまとめているのか、真人は駅構内から遠ざかっていくパトリシアの後姿を見ながら、その行動に関心を抱いた。
そして、大農場で多くの人を使い経営している両親の姿を長年見ているパトリシアが、自然と身につけた人身掌握術なのかもしれないと思った。
真人に対する気の使い方にも、パトリシアの気配りが働いていることを知った。
やがて、ナンシーがやってきた。
少し離れたところからナンシーは、手を高く上げてニコニコしながら合図して近付いてきた。
真人も手を振って応えた。
「また会えてよかった」
ナンシーは、そう言って真人の腕をつかんだ。
「そうな、また会えてうれしいよ。ナンシー」
「良いお店に案内するから、早くそこへ行って、お話ししながら、美味しいものを沢山食べましょうね」
「ナンシーと一緒に食事ができるのは、うれしいよ」
「わたしもよ、ちょうどいい時間に到着してよかったわね」
「そうだな、実は、一人で食事をするのは寂しいと思っていたんだよ。だから、ナンシーから連絡があったときは、うれしくて、思わず声を上げそうになったよ」
「そうだったの、良かった」
駅前広場には、観光客らしい人並みが揺れ動いている。
チューリッヒ空港が近いこともあって、大きなバッグを持つ人が多い。
パトリシアたち5人のメンバーは、すでに姿を消していて、広場のどこにも見当たらない。

