2009年11月08日

312.楽しみが詰まった街

列車がヴェローナ中央駅へ近付くと、真人は何となく胸騒ぎがした。
数日前に訪れたばかりであるからか。
否、それだけではない。

エレナの家のことが鮮やかに甦ってきた。
そして、エレナの明るい笑顔が浮かんできた。
エレナの二人の娘、カロリーナとアンナは、真人に懐いて離れず可愛い
真人は、この母娘といると自分の家族のような気がしてくるのだ。
エレナは、真人にとって特別の存在になりつつある。
エレナの優しさ、女性らしさ、淑やかさ、心の広さ、美しさには強く惹かれる。
真人の思いは、エレナに伝わり、心が通い合えるから多くを語らなくても、お互いに親しみを感じているのだ。
でも、広い家とはいえ、同じ屋根の下にいるシルビアとルイーザの誘いを、受け続けることができるだろうか。
ジュリエッタの家の中庭の奥にある「ジュリエッタ像」の右胸にタッチすると、幸せな結婚が出来るというので、シルビアはうれしそうに真人の目の前で触れて、喜んだいた笑顔が忘れられない。
真人の事業展開には欠かせなくなった、二人との関わりをなんとしても続けたい。
胸騒ぎがしたのは、それらが複雑に絡み合って、真人の頭の中を駆け巡ったからだ。

「真人、先ずホテルへ行きましょうね。それから観光をするんでしょう?」
春子は、下車の準備をしながら真人に、明るい笑顔で声をかけた。
「ロミオとジュリエット」の舞台ヴェローナは、春子の好きな街で、演劇学校訪問など楽しみがいっぱい詰まっているのだ。
ヴェローナの観光スポットは狭い範囲内にある。
観光となれば、ブラ広場へも行くことになるだろう。
そこは、古代の円形劇場遺跡アレーナがあり、目の前にはエレナの家がある、
真人は、ヴェローナへ来たことを春子に話していない。
仕事にかこつけて、どのように話そうかと迷っているうちにヴェローナに着き、話す機会を失ってしまったのだ。
だから、観光には躊躇いがある。
「ホテルでゆっくりしようよ」
春子は、ホテルで早くゆっくりしたいと思っている。
真人は、その気持ちを察していたから、そう提案したのだ。
「あら、良いの?・・・うれしいわ」
春子は案の定喜んでくれてよかった。
「夕食の時間まで、あまり間がないだろう?」
「ホテル内のレストランへ予約してある時間まで、あと2時間くらいね」
「ゆっくりするには、ちょうど良い時間だな」
「そうね、・・・」
そう言うと、春子はうれしそうにからだを揺らしながら列車を降りた。
posted by シーサン at 12:37| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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